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豊胸用乳房バッグがリコール回収となります

2019年08月14日(水) | カテゴリ: 美容外科, バスト・豊胸
患者様の皆様に重要なお知らせがあります。

乳房の豊胸に用いられているバッグについてはかねてより、
悪性腫瘍発生との関連性についての議論がありましたが、
このたび米国FDA(日本の厚労省相当)は、悪性リンパ腫発生との関連がほぼ確定的として
アラガン社製の豊胸用バッグ(の一部)と豊胸手術の準備段階で使用するエキスパンダー(の一部)を
自主回収するよう求めました。

この悪性リンパ腫の発生に関しては、今年4月に既にフランスにおいて
フランス保健当局が豊胸バッグの使用を禁止としていたため
おそらくその時点で今後全世界的な流れになるであろうと見られていましたが、
この度ついにFDAの勧告およびメーカー側の判断で世界的に一斉自主回収することとなりました。

もう少し詳しく述べますと、
回収となるのはテキスチャードタイプと言い表面がざらざらのもので、
術後被膜拘縮が起こりにくいとして日本国内でも使用が推奨されていたタイプです。

ちなみに表面のタイプにはこのざらざらのタイプとツルツルのスムースタイプがあり、
スムースタイプは乳房の動きを重視する時に使われることもありますが、
一般的にはテキスチャードタイプが使われることが多いです。
(拘縮のリスクを回避出来る、マッサージが不要などのメリットがあると考えられていたため)

そのため本商品は、
豊胸術を行っているほとんどのクリニックが使用してきた製品と言っていいでしょう。

それほどまでにメジャーなタイプのバッグということになります。

そして、このリンパ腫はbreast implant-associated analplastic cell lymphoma (BIA-ALCL)、
乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫でありT細胞性リンパ腫の一つとして
悪性に分類されます。

当院では、インプラント(バッグ)による豊胸手術は
ビル診療で入院施設がないなどの理由により行ってきませんでしたが
既に豊胸手術を行った患者様にとっては大変ショッキングなニュースであることでしょう。

もし今バッグが胸に入っているのなら、
そのバッグのメーカーと表面形状のタイプについて手術を行ったクリニックに
一旦は問い合わせて確認することをお勧め致します。

なお、仮にテキスチャードタイプのバッグを入れていたとしても、
全ての方に悪性リンパ腫が発生する訳ではありませんのでそのまま様子を見るというのもありますが、
もし不安ならいったんバッグを抜去されるのも一つの選択肢です。

FDAは、この事実を2011年時点で把握していましたが、手術とリンパ腫による死亡の因果関係が
データ数が少なくはっきりしなかったため今年まで使用禁止にしてきませんでした。

しかし、2019年7月の時点で人工乳房による豊胸が原因と見られるリンパ腫により
33人が死亡していることを発表しています。
そして死亡患者の大半がアラガン社のバッグ製品をしていました。
(2019年7月25日産経新聞記事より)
また、死者以外に現在573人の患者が確認されているようです。

FDAの集計では現在のところ日本人の死者数と患者数は不明とのこと。

なお世界保健機関(WHO)も、豊胸術に関連したリンパ腫を
「豊胸術後に生じる可能性がある希なT細胞リンパ腫」に既に以前より指定しています。
(AFP通信記事より)
日本の厚生労働省も同様に注意勧告を発しています。

そして、アラガン社は今回バッグを自主回収するだけでなくもはや販売自体を停止すると
2019年7月24日に発表しました。(朝日新聞記事より)

今後の美容医療業界の流れとして
シリコンバッグによる豊胸術が激減することが予想されると同時に、
現在豊胸手術を受けてバッグが入っている方の抜去手術が急増することが予測出来ます。

またバッグの抜去術を行いボリュームが減少してしまった乳房に対し
自己の脂肪組織を用いた脂肪注入による豊胸手術が
今後急激に需要を増す可能性が出てまいりました。

当院では日帰り手術として、乳房バッグの抜去を承っています。
また、バッグ抜去に伴うボリューム減少に対してもコンデンスリッチ・システムを使用した
自己脂肪(自家脂肪)による豊胸術も同時に行っています。

いずれも局所麻酔を用いて可能な手術ですが、
ご希望がある場合には静脈麻酔(点滴麻酔)の併用も可能です。

現在バッグが胸に既に入っていて、少しでも不安のある方は一度当院へご相談頂ければと思います。

監修者情報
美容外科・美容皮膚科 みずほクリニック院長

札幌医科大学・大学院卒業。米国フロリダ・モフィット国立癌センター勤務(ポストドクトラル・フェロー)後、札幌医科大学・形成外科 助教、北海道砂川市立病院・形成外科 医長、大塚美容形成外科入職(大塚院・金沢院・名古屋院など)を経て、2014年みずほクリニック開院。形成外科・美容形成外科での豊富なオペ実績とあわせ、レーザー治療や注入術へ対する独自理論を追求し、患者様の理想とする姿を目指し的確でスピーディな結果を出すことに意欲を注ぐ。
免許・資格:日本形成外科学会・認定専門医、日本美容外科学会・正会員、医学博士