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人中短縮術(リップリフト)を失敗させないためには

2020年08月19日(水) | カテゴリ: 口元・唇・耳など
「人中短縮」もしくは「リップリフト」と呼ばれる手術は、
現在かなり流行っていて大きな需要があるようです。

人中(じんちゅうorにんちゅう)とは鼻下と上唇の間の皮膚のことであり、
この部分の距離が長く間延びしていると、なんとなく顔の各パーツが
バランス的に見栄えがよくないことがあります。

これを改善するために、鼻下の皮膚のキワぎりぎりのラインを狙って皮膚切除することで、
人中の長さを短縮しつつ上唇を上方に持ち上げ、上唇に厚みを出します。

人中短縮によって、いわゆる流行のアヒル口のようなイメージになります。
ヒアルロン酸を定期的に入れて厚みを出すよりも永続的な効果が得られる点がメリットです。

ただし、笑った時に上顎の歯茎が見える「ガミースマイル」気味の方は要注意です。

上唇が上方に引き上げられることでますます「ガミー」が強調されてしまいますので、
基本的に「ガミー」の方にはこの手術は禁忌です。

さて人中短縮術のポイントは、
一にも二にも「切開ラインのデザイン」が重要ということにつきます。

他院で行った症例を外来で見かけることがありますが、
鼻下に非常に目立つ一直線の傷跡が残ってしまっているケースが時々見受けられます。

切開ラインが鼻孔からかなり距離が離れた場所にあるため
傷跡の端から端まで全てが正面から完全丸見え状態になってしまっており、
術後の状態として、これはいかがなものかと思ってしまいます。
(もちろんご本人に敢えて指摘はしませんが…)

人中における切開デザインおよび縫合ラインは直線ではなく、
M字型(波打つようなデザイン)が鉄則です。

つまり、鼻翼基部から鼻柱基部までは鼻孔底隆起を狙い
鼻孔内の粘膜に切開ラインの大部分がくるようにデザインします。

それによって傷跡の約90%を鼻の穴の中に隠すことができるので
仕上がりの傷跡が前からみてほぼ分からなくなります。

一方、患者様からのよくいただく問い合わせで、
「筋肉処理はしますか?」というものがあります。

おそらくどこかのホームページなどで見て知識を得たのでしょう。

当院では、少し口輪筋を切除したり剥がしたりは行っていますが、
正直なところ上唇は遊離縁(つまり周囲組織と完全にはつながっていない)ですので、
口輪筋の処理を行わなくてもそれほど後戻りしやすい場所ではありません。

ただし、口回りで動く場所ですので傷跡が後々広がったり、下がって来ないようにする配慮として、
当院では前鼻棘(ANS; Anterior nasal spine)の骨膜を固定源として上唇の口輪筋を吊り上げ
固定したりするなどの工夫は行っています。

しかし、それらの細かいテクニックは実際さほど重要度が高くなく、
やはり手術の一番最初に行う切開デザインのほうがよほど大切であるということを
この手術を検討中の方は絶対知っておいたほうが良いです。

実際の症例を見てみましょう。





上は、鼻下から上唇までの距離が長く間延びしていることと、
上唇が薄いことを悩まれて当院を受診した44歳の女性です。

鼻下の間延び感を打ち消す方法としては鼻柱延長(鼻柱下降)術も良いですが、
今回はリップリフト効果も狙って、人中短縮を行うこととなりました。





上は術後1ヶ月目の状態です。
通常切開系の手術の傷跡は1ヶ月目に赤みなどがピークに達して一番目立つ時期のはずですが
この時期でこの程度の見え方なら最終的にはかなり目立たなくなることが予想されます。





そして上は術後4ヶ月目の状態です。
傷跡は既に白い瘢痕となっていて目立ちません。
鼻孔粘膜の中に傷跡が入ることで大部分がカモフラージュされており、
ANSを固定源とする吊り上げ固定の効果で上唇の厚みも術直後と変わらずキープされ続けています。
4ヶ月目でこの状態であれば、今後も永続的な効果が期待出来ると予想します。


さて、人中短縮を希望される患者様のうち何割かは、
同時に鼻先付近の整形手術を希望される方がいます。

クローズ法つまり、鼻柱の皮膚切開なしで行う場合には何ら問題はありませんが
鼻柱皮膚の切開を伴うオープンアプローチで行うことが多い鼻中隔延長や
鼻尖修正(鼻先縮小)などの手術を希望される場合は人中短縮と同時に行うことは出来ません。

なぜなら、鼻柱皮膚の切開ラインと
人中短縮の切開ラインがかなり近接して平行に存在するため、
傷の治り方と傷跡の仕上がりに問題が生じるリスクが高いからです。

オープンアプローチの鼻手術と人中短縮の両方を行う場合は必ず、
それぞれ別日として間をあける必要があります。

どちらが先でも順番は良いのですが、その間隔は最低3ヶ月間。
理想的には余裕をもって6ヶ月以上などが望ましいです。

この件について、メールや電話の問い合わせを良く頂くため参考までにコメントしておきます。
人中短縮術に関する詳細はこちらです。

<本ブログの症例に関する情報>

治療名:人中短縮術(リップリフト) 費用:220,000円(税込)
治療に伴う可能性のあるリスク・副作用:傷跡、ケロイド、肥厚性瘢痕、後戻り、上唇の知覚麻痺、感染など
施術内容に関する問い合わせ先:お問い合わせフォームからどうぞ

監修者情報
美容外科・美容皮膚科 みずほクリニック院長

札幌医科大学・大学院卒業。米国フロリダ・モフィット国立癌センター勤務(ポストドクトラル・フェロー)後、札幌医科大学・形成外科 助教、北海道砂川市立病院・形成外科 医長、大塚美容形成外科入職(大塚院・金沢院・名古屋院など)を経て、2014年みずほクリニック開院。形成外科・美容形成外科での豊富なオペ実績とあわせ、レーザー治療や注入術へ対する独自理論を追求し、患者様の理想とする姿を目指し的確でスピーディな結果を出すことに意欲を注ぐ。
免許・資格:日本形成外科学会・認定専門医、日本美容外科学会・正会員、医学博士