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実は奥が深い眉間のしわ取りボトックス治療

2016年10月24日(月) | カテゴリ: しわ
左右の眉の間、つまり「眉間」の中央に縦にしわが入る状態は、
英語で Anger wrinkles(怒りジワ)と呼び、老け顔を印象づけるのみならず
あたかも機嫌が悪いかのように見えるため、このしわを改善したいというという方が多いです。

特に接客業に従事している方では、顧客とのコミュニケーション上、
表情からネガティブな要素を取り除いておきたいというのも当然です。

しわの本数は、縦に2本の場合が多いですが、人によって中央に一本であったり、
中央の1本プラス両外側に2本で3本であったり、パターンは様々です。

また、溝がいわゆる細い線のしわである場合の他に、なんとなくぼんやりと幅のある
ヘコミである場合もあり、この場合はヒアルロン酸注入がよく効きます。

眉を寄せたときの出来るしわは「表情しわ」と呼び、
それがくせになって皮膚に折り目がしっかりついて、眉を寄せなくてもスジ状に
しわがしっかり刻まれてしまっている場合には、これを「静止しわ」と呼びます。

「表情しわ」に対しては、ボトックスにより筋肉の動きを抑制することが有効であり、
「静止しわ」には、ボトックスとヒアルロン酸注入の両方を行うことがより望ましいと言えます。
 *部位によっては、ボトックスを使うことが出来ない表情しわもあります。

なお、改善するのが比較的難しいのは、一見しわのように見えるけれども実際にはしわではなく、
開いた毛穴が直線上に並ぶ、「帯状毛穴」「たるみ毛穴」であり、これについてはヒアルロン酸や
ボトックス注射は、当然無効ということになります。

そのような場合、毛穴そのものに対する治療が必要ということになります。

たとえば、トレチノイン外用による角質のピーリング、ダーマローラー、フォトフェイシャル(IPL)を
強めに掛ける、炭酸ガスフラクショナルなどが毛穴引き締めて目立たなくする治療手段の代表です。

実際のところ、静止しわのみ、表情しわのみ、あるいは帯状毛穴単独で存在することは珍しく、
最低2つが混じっていることも多いため複数の治療を組み合わせるとより満足度の高い結果となります。

しかし、今回は話を分かり安くするため、あえて典型的な表情しわのみの症例を1つご紹介します。

下は、眉毛を中央に寄せるクセがあり、その時に出来る眉間のしわが気になり、
出ないようにしたいという希望の43歳の女性です。


眉を寄せると、眉間の4本の縦じわがよります。
しわの原因である、皺眉筋(すうびきんor しゅうびきん)の筋力が非常に強いタイプです。

ちなみに、皺眉筋は眉毛の上を眉毛に平行して走っていますので、
眉の上に沿ってボトックスを打ってゆきます。

上の図で眉毛の上にあるのが皺眉筋であり、
矢印の方向に筋肉が収縮することで眉間にしわが寄ります。

これを前もって説明しないと、施術中に「なぜ皺の所に直接打たないの?」
と患者さんから聞かれてしまうことがあります。

また、皺眉筋に加えて、眉間の中央付近にある鼻根筋も眉間の縦じわを作る筋肉であるため、
眉間部分にも直接ボトックスを打ちます。
上の筋肉の図で眉毛の間に縦に走っている筋肉がそれです。

あくまで狙うのはしわそのものではなく、しわを作っている原因たる筋肉がターゲットです。
ボトックスが筋肉の動きを抑えることで、3日から7日以内にはまず表情じわが改善され、
続いて2ヶ月から3ヶ月かけて静止しわも徐々に改善されてゆくことが多いです。

以下はアラガン社製のボトックス・ビスタ15単位を、皺眉筋全体と鼻根筋を狙って打ちました。



上が術前、下が術後2週後の状態です。

上下ともに、眉を中央に寄せる表情を作ってもらうよう努力してもらっていますが、
施術後は眉をひそめることが全く出来なくなってしまっているため、しわが完全に消えています。

ところで、この治療は美容医療初心者のドクターには案外難しく、
かなり年季の入ったベテランでなくては効果が出なかったり、おかしな副作用が出たりすることがあります。

以下にその傾向と対策を述べます。

<問題その1;眉毛が下がる>
これは、入れるボトックスの量が極端に多いか、
眉毛を挙上する働きをになう前頭筋の方向へ薬液が拡散することで生じます。

二重の幅が狭くなったり、元々目の開きが悪い人の場合眼瞼下垂のようになってしまうことがあります。

注射で薬剤を注入する際に、ゆっくりと静かに打つだけでなく、
前頭筋の方向に出来るだけ拡散させないよう、左手の指でブロックしながら打つのがコツです。

適切なレベルの施設でトレーニングを受けていないドクターがこの手技を行った場合に
一番生じやすく問題になっているのが、この「眉毛下垂」という副作用です。


<問題その2;効果がない>
筋肉の走行と打つポイントの深さを考えて打つことで、しわの完全なる改善を得ることが出来ます。

皺眉筋は、内側で深く、外側に向かって浅いレベルを走行しています。
全て一様の深さに打ったのでは、皺眉筋に適切な量の薬剤を浸透させることは出来ません。

内側では骨膜直上付近の深さで、外側に向かって徐々に針先の深さを浅くし、
最外側では真皮レベルに打つようにします。


<問題その3;眉の外側が引きつれたように上がる>
ネットで閲覧できる症例写真で、おもいっきり眉の外側が吊り上がって
引きつったように見える例を堂々と成功例の症例写真として出しているのをしばしば見ます。

眉毛が「逆ハの字」となっている状態です。

確かに眉間のしわはうまく取れているのですが、患者さん的には完全に失敗という認識となり、
二度とボトックス治療は受けまいということになります。

行う側と受け手の認識に大きなギャップがあるケースです。

これには実は理由があり、解剖の教科書などにもはっきりと皺眉筋の停止は
眉毛中央付近の皮膚と書いてあることが原因です。

つまり、皺眉筋を狙って打つのだから、外側の注入ポイントは眉毛の中央部で終わるべきというのが、
論理的な結論に本来はなるはずです。本来ならです。

しかしながら、実際には眉毛の内側から中央部において、
眉毛を上げるのに用いる前頭筋の緊張も同時に弛緩するため、ボトックスを打たない眉毛の最外側で
前頭筋の緊張がマックスとなり眉毛の両端がつり上がったような形になります。

これは、眉間へのボトックス注射を行うと
眉毛直上部分の額の横シワも同時に改善されることを見れば明らかです。

音楽演奏のプロやパフォーマーなど特殊例で、舞台に立つときに表情をりりしく見せるために
意図的にわざわざこのように打つ場合もなくはないのですが、
決して一般の患者さんには受け入れられないでしょう。

ですから、私は、眉毛の上の最外側にわずかに真皮の深さにボトックスを入れて、
このような不自然な眉の形にならないようにしています。

逆に最外側で効き過ぎると、今度は眉毛がその部位でのみさがって、ハの字型の眉毛となり、
「悲しい表情」「困ったような顔」となるため、それを防ぐためにあえて筋肉にはじか打ちはせずに、
真皮の深さから筋肉に向かって徐放させるようなイメージで打っています。


上記のような点を注意して行っていれば、
トラブルに見舞われることがまずあり得ないのがボトックスによる眉間しわ取り治療です。

しかし、残念ながらただの注射なのだから医者ならば誰でも出来るだろうという甘い認識のもと
我流でこの治療を行って、ボトックス恐怖症の患者さんをつくっている施設が結構あるのが現状です。

せっかく患者さんにとって非常に有益な治療であるのに、
「ボトックスで失敗した」などという風評被害がここ何年かしばらく続いているのが本当に残念です。

それゆえ、「実際に正しく使えばこれほど安全で有効な治療はないのですよ」と言って、
外来で日々ボトックス治療の信用回復に努め続けている次第です。
当院のボトックス治療詳細はこちらです。

<本ブログの症例に関する情報>

治療名:眉間のしわとり治療(ボトックス) 費用:14,300円(1部位)
治療に伴う可能性のあるリスク・副作用:腫れ、内出血、眉毛下垂、眼瞼下垂症状など
治療内容に関する問い合わせ先:お問い合わせフォームからどうぞ

監修者情報
美容外科・美容皮膚科 みずほクリニック院長

札幌医科大学・大学院卒業。米国フロリダ・モフィット国立癌センター勤務(ポストドクトラル・フェロー)後、札幌医科大学・形成外科 助教、北海道砂川市立病院・形成外科 医長、大塚美容形成外科入職(大塚院・金沢院・名古屋院など)を経て、2014年みずほクリニック開院。形成外科・美容形成外科での豊富なオペ実績とあわせ、レーザー治療や注入術へ対する独自理論を追求し、患者様の理想とする姿を目指し的確でスピーディな結果を出すことに意欲を注ぐ。
免許・資格:日本形成外科学会・認定専門医、日本美容外科学会・正会員、医学博士