
女性であれ男性であれ、ワキのニオイは身だしなみの一貫として気になるもの。ワキガが生じる割合に男女で差はほとんどありませんが、実際にワキガの相談に来られるのは女性の患者様のほうが多い傾向にあります。これは、マナー・エチケットとしてニオイを気にされることが女性のほうが多いためかと思いますが、実はここ最近は男性の患者様からのワキガ治療に関するご相談もかなり増えてきています。
男性のワキガ治療の診察においては「自分のワキガのニオイはどのくらい強いのか」「治療が必要な程度のワキガなのか」といった、ニオイの強さやニオイの傾向について質問をいただくことが多いため、今回は男性のワキガに多いニオイの特徴や種類・傾向についてなどをまとめてみたいと思います。
ワキガとは

わきがとは「腋臭症(えきしゅうしょう)」のことを言い、通常の汗とは異なる独特のニオイが脇から生じる症状です。汗を出す汗腺にはエクリン汗腺とアポクリン汗腺という2つがありますが、このうちアポクリン汗腺から出る分泌物がワキガに関係しており、この分泌物を皮膚表面の常在菌が分解することで独特なニオイを発症します。
なおワキガは遺伝性が高い症状で、両親のいずれかがワキガの場合は約50%の割合で子どももワキガになり、両親がともにワキガの場合は75~80%の割合でワキガが遺伝します。またアポクリン汗腺は脇の他に陰部や乳輪付近にも多く存在するため、ワキガの症状がある際にはすそわきが(陰部腋臭症)、ちちが(乳輪腋臭症)の可能性が高いです。
ワキガのニオイは
7種類
ワキガのニオイは「納豆のようなニオイ」「ネギやタマネギのようなニオイ」「生乾きの雑巾のようなニオイ」「クミンなどの香辛料のニオイ」等に例えられることが多いですが、実際には「ミルクや母乳のようなニオイ(ミルク臭)」「枝豆のようなニオイ」などもあり、大阪公立大学大学院医学研究科ゲノム免疫学と株式会社マンダムによる共同研究(2024年/腋臭分類・腋窩代謝物と細菌叢の解析)などによって、ワキガ臭は以下の7つのニオイに分類されることがわかっています。
ワキガのニオイの種類

- M型 ミルク様臭、ベース臭
- A型 酸様臭
- K型 カビ臭
- C型 カレースパイス様臭
- E型 蒸し肉様臭
- W型 生乾き臭、水っぽい
- F型 鉄臭
- Other その他
実際に医療現場に携わる者としても、ワキガ治療の診察の際に患者様によって「ニオイの強さ」だけではなく「ニオイの傾向の違い」を感じることはしばしばありましたが、このように明確で分かりやすい分類になっていると、医師としてもなるほどと腹落ちするものです。
ちなみに大阪公立大学大学院医学研究科ゲノム免疫学と株式会社マンダムによる共同研究結果(2024年)は、国際科学誌「Journal of Investigative Dermatology」にオンライン掲載されており、腋臭症に対する新たな治療技術の開発などでも今後活用されていくことになるのではと思われます。
男性に多い
ワキガの種類や傾向

ワキガの種類は7つであるとお伝えしましたが、前述の共同研究レポートによるとワキガには性別や年齢によって種類や傾向に違いがあることもわかっています。
男性に多いワキガの種類・傾向
①男女でのワキガ臭の強さ
女性よりも男性のほうがワキガのニオイが強い傾向が高い
20代・40代の男女で比較した際のデータにはなりますが、いずれも男性のほうがニオイの強さ(腋臭強度)が高い傾向にある。
②年齢別のワキガ臭の強さ
男性のワキガは
10~20代が最もニオイが強い
男性のワキガの腋臭強度(ニオイの強さ)は、10~20代が最もきつくなり、30代以降から次第にニオイが軽減していく傾向にある。
③ワキガで最も多いニオイの種類
男女とも「ミルク臭」のワキガが最も多い
日本人で最も多いワキガのニオイはミルク臭(M型)で、ついで酸様臭(A型)、カレースパイス様臭(C型)と続き、この3つの分類で9割程度を占めます。
ワキガのニオイというと「玉ねぎのニオイ」や「納豆臭」「酸っぱいニオイ」をイメージすることが多いため、「ワキガで一番多いニオイはミルク臭」という結果については違和感があった方もおられるのではないでしょうか。私たちが普段の生活で感じるワキガのニオイと本調査結果の違いについては次の項目でもう少し説明したいと思います。
ワキガの種類次第では治療不要なことも
前述した大阪公立大学大学院医学研究科ゲノム免疫学と株式会社マンダムによる共同研究結果(2024年)によると、ワキガの種類によって「ニオイの強さ」にも違いがあることが分かっています。
3大ワキガ臭のニオイの強度
ミルク臭 < 酸様臭 < カレースパイス様臭
あくまで考察にはなりますが、日本人に最も多く存在するミルク臭型のワキガについては以下2点が考えられます。
①ニオイがそこまで強くないので気にならない
②さらにニオイの種類的にも、絶対我慢できないニオイというわけではない
そのため本人も周囲もそれほどミルク臭のワキガについては気にしておらず、悩んでいる人も少ないため結果的にクリニックで治療を受けることもほとんどなく、対して、3大ワキガ臭(ミルク臭・酸様臭・カレースパイス様臭)の中でも最もニオイが強いカレースパイス様臭(香辛料のようなワキガ)については、ニオイの出現頻度はミルク臭よりも低くはなるものの、ニオイが刺激的であるため本人も周囲も気になりクリニックに相談に来られる傾向が高くなると思われます。
実際に、当院にワキガのニオイについて相談に来られる方は刺激のあるニオイ(香辛料タイプや酸っぱいタイプ)が多く、ミルク臭を気にして相談に来られる方はごく稀です。このような背景を鑑みると、ミルク臭のタイプのワキガの方については無理にワキガ治療を行う必要はなく、ご本人がどうしてもという場合のみ治療を受けるというスタンスで問題ないでしょう。
クリニックでのワキガ治療について
ミルク臭タイプのワキガについては、ニオイがそこまで強くなく周囲も気にならない程度のため、ワキガ治療は本人次第で必須というわけではないという点についてお伝えしました。
対してカレースパイス様臭や酸様臭のタイプについては、周囲が気になるような刺激臭であるうえにニオイもキツイという特徴があるため、このようなワキガタイプの場合はクリニックで専門治療を受けることも検討されたほうが良いかもしれません。
男性の場合、当院ではマイクロ波(ミラドライ)による治療法が人気です。手術よりも痛みやダウンタイムが少ないこと、マシン治療でありながら半永久的に効果が持続する点が選ばれる理由です。といっても医療機関で行う治療であることに変わりありませんので、ミラドライであっても術後にダウンタイムはもちろん発生します。ダウンタイムや効果、費用感などをトータルで検討していただいた上でご自身にあったワキガ治療を選ばれると良いでしょう。
「再発率が最も少ない治療法で受けたい」「痛みができるだけ最小限に抑えたい」など一人ひとりのご希望やご相談事項は異なりますので、当院ではそれらの内容に合わせた形で治療法を提案しています。気になる際には一度ご相談ください。
※記載されている料金やリスク・副作用、施術内容はコラム投稿時の情報となります。最新の情報は変更となっていることもあるため、詳細は当院までお問合せ下さい。