頭皮のフケ・赤み、眉毛や眉間、鼻の脇の赤み…
頑固な脂漏性皮膚炎も、飲み薬だけで治す方法があります。
脂漏性皮膚炎は、思春期以降の年齢、特に30代、40代に多く生じる症状です。頭皮のフケが急に多くなったり、顔面(特に眉毛・眉間・鼻の脇・鼻唇溝など)において赤みが増し、細かなフケ様の粉をふいたような状態となった場合、脂漏性皮膚炎の発生を強く疑います。当院へ「赤ら顔を何とかして欲しい」として訪れる患者様のうち、1割ほどに脂漏性皮膚炎の方を認めます。
脂漏性皮膚炎は一般的に皮膚科領域(保険診療)の疾患と考えられ、実際皮膚科を受診される患者様が多いと思います。皮膚科では一般的な治療パターンとして、ステロイドの外用薬やケトコナゾールなどの真菌薬を処方されますが、一時的に改善しても再発率が高く、完治にまではいたらないケースがほとんどであり、慢性的な症状が続く病気の一つと言ってもよいでしょう。
それは何故か?そもそも脂漏性皮膚炎の原因には過剰な皮脂の分泌があり、これを栄養分として皮膚の常在菌であり真菌(カビ)の一種であるマラセチア属(Malassezia, マラッセジアとも)が過剰に増殖することで、皮脂の構成成分の1つであるトリグリセリドをマラセチアが分解して遊離脂肪酸を作り出します。これが皮膚を刺激し炎症が起こり、皮膚の赤みと鱗屑(りんせつ:フケ様の粉)を発生させます。かゆみなどはかなり強い炎症が生じない限り発生はしませんが、整容的・美容的視点からマイナス要因としてストレスを感じる方が男性・女性問わず多く、生活の質(QOL)を著しく下げてしまいます。
以上の脂漏性皮膚炎の発生機序を考えればわかることですが、マラセチアの増殖や皮膚の炎症はあくまで皮脂の過剰分泌を元の原因として発生する結果の方であり、これらに対する抗真菌薬やステロイドの外用療法などは対症療法であることが分かるかと思います。例えるなら、風邪の時に熱を下げる解熱剤を使うのと同じ事です。もちろん既存のこれらの治療法は決して間違った治療法ではないのですが、根本的な治癒には結びつきづらいということもまた事実であることがご理解頂けるかと思います。
それでは、この病態の根本原因である皮脂の分泌をおさえるのにはどうしたら良いのでしょうか?
当院は、以前からニキビの根本治療法として内服薬の「ロアキュタン」(アキュテイン)という薬を使用して、重症の難治性ニキビを数多く治してきた経験からこの薬が皮脂の分泌を強力に抑えるということを知っていました。そこで、数年前から外来に赤ら顔治療希望で訪れる患者様の中にしばしば見られる脂漏性皮膚炎の方を見つけては、この薬を処方してきました。すると10年来など長期間にわたり悩み続けた皮膚の赤みと粉をふいたような肌が、みるみるうちに改善して健康な肌が取り戻されてゆくことを発見したのです。
一般に、脂漏性皮膚炎の原因として食生活の偏りによる油分の取り過ぎとビタミンB群の不足が指摘されてきましたが、この皮膚疾患で治療の鍵を握るのはむしろビタミンAではないかと当院では考えています。なぜならこの治療薬ロアキュタンの成分は超高用量のビタミンAそのものだからです。
ビタミンAは、皮脂の分泌が抑えるだけでなく表皮の角質代謝を正常化する働きがあります。これにより、マラセチアの餌となる皮脂が減少するだけでなくフケ様の鱗屑が発生するのを防ぎます。皮膚の機能を正常化する上で、ビタミンBやビタミンCは以前から重要なビタミンとして世間一般において認知度が高いのですが、最も原始的でありながら基本的なビタミンとされるビタミンAの役割がスキンケア全般において今一度見直されるべきと私個人としては常日頃から考えています。