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片目のみの眼瞼下垂症例(腱膜性)

2015年05月25日(月) | カテゴリ: 美容外科, 二重整形・眼瞼下垂・目元
片目のみ眼瞼下垂になられた
患者さんの治療を行ったのでご紹介致します。

目を開けるのに用いる挙筋腱膜が伸びてしまった症例です。

自分が眼瞼下垂か見て欲しいという患者さんが多くいらっしゃいますが、
この写真を見ると少し理解しやすいかと思います。

以前に眼瞼下垂症例としてブログで写真を掲載したこともありますが、
その時の症例はあくまで、「皮膚のたるみ」によって
視野が狭くなっているだけでした。

この場合、ドクターによっては
「皮膚性眼瞼下垂」とか「偽性眼瞼下垂」などと呼んで
真の眼瞼下垂と区別することが多いですが、

私としては、挙筋腱膜が緩んで伸びていようと皮膚性であろうと、
視野が狭くなって日常生活に不便を感じているならそれは、
眼瞼下垂として治療することにしています。

皮膚のたるみで視野が狭くなっているケースの治療は、
若返り治療だからそれは美容治療=自由診療だとわりきっているドクターも
いるかとは思いますが。。

私の考えとしては、あくまで呼び方(ターミノロジー)の違いであり、
患者さんにとっては、上瞼の治療を行うことで視野が広がり、
ものが見えやすくなったり、それによって額の筋肉を使わずに済むようになって
頭痛・肩こり・首のこりが楽になれば結果同じことだと思っています。

出来るだけ保険適応として治療して差し上げたいのはやまやまですが、
下垂の程度具合(軽症、中等度、重症など)によっては
自由診療でやらせて頂く事もあります

皮膚性なら、状況や皮膚の厚さにもよりますが、
切らない方法でも、切る方法でもある程度は対応可能ですが、
腱膜性の場合、基本的に皮膚を切る方法が最も確実かつ結果がいいです。

「縫合による腱膜短縮」ということをうたっているクリニックもありますが、
この方法は大変トリッキーであり、うまくいく場合とそうでない場合もあります。

糸を通すコースが通常の埋没二重と異なるため、
内出血が出やすくなる点と目の開きの左右差の調節が非常に難しい
ということもあります。

また、結膜側の縫合or切開で
Muller筋ないし挙筋腱膜を短縮する手術もありますが
こちらも内出血が皮膚を切る方法よりむしろ出てしまうことがあり、
目の開きの調節も皮膚側を切る方法よりも難しくなってきます。

症例写真などを見ると一見上手くいっているように見えますが、
いわゆるチャンピオン・ケースを掲載しているのだと思います。

あくまで、それがベストの方法なのではなく、
そういう選択肢もあるという程度に思っていたほうが良いです。

上瞼の皮膚を切らせてもらい
オーソドックスな方法で手術をさせてもらえるなら、
一番良い結果を出せるという事に対しては
どの形成外科医・美容外科医も実は本心では異論は無いはずです。

実際はこれら、結膜側アプローチや切らない埋没法による腱膜短縮は、
いわば患者さんにアピールして集患するための「見せメニュー」の一つ
と考えるほうが賢明です。

事実結果は安定しないことが多いわけですからとてもお勧めは出来ません。

さて、今回のケースですが長いことコンタクトレンズを
長期連用したことによると疑われる右目の腱膜性眼瞼下垂の50代の女性です。

睫毛の生え際=瞼のヘリの位置が下がり、瞳孔の位置が見えなくなっています。

これが重度の眼瞼下垂症です。

もともと右目の開きが左よりも悪かったようですが、
最近いよいよ開きが悪くなってきた事を苦として当院を受診されました。

眼科を受診して相談したところ、突如先生が怒り出したとのこと。

全く意味が分かりませんが、同じような話を何故か繰り返しよく耳にします。

治せないなら素直に眼瞼下垂を保険で行っているクリニックを
紹介すれば良いだけなのにと毎回思うのですが、
プライドが邪魔をしてそうさせないのでしょうか? 謎です。

右目の開きを補うように右側の眉がかなり吊り上がっており、
額の筋肉を使っていることが分かります。

代償性の眉毛挙上です。

必ずしもこれが原因とは言えませんが、頭痛や肩こりもあるとのこと。


下は、上瞼の皮膚切開により腱膜短縮手術を行った直後の状態です。



右目の開きが改善したので、既に右側の眉を上げる必要がなくなり、
左右の高さが手術前よりも揃いつつあります。

現在経過観察中ですが、手術後、慢性的にあった
頭痛・肩こり・首のこりが嘘のように消えたと大変喜ばれていました。

そして、今後考えられることとしては、腫れが引いたときに
一つは上瞼のたるみが生じてくる可能性があります。

目の開きがよくなり折り込みが深くなると皮膚の余りが目立ってくるからです。

また、時々あることなのですが片側の眼瞼下垂が手術により改善すると、
額の緊張が取れることで眉毛の位置が両側ともに下がることや、
脳からの「上瞼を開けよ」いう指令信号(シグナル)が両側で減ることで、
今度は開きの良かった側に眼瞼下垂が生じることがあります。

いわゆる「ヘリングの法則」という現象です。

そこで、元々眼瞼下垂がなかった側の腱膜短縮手術が必要となることもあります。

法則と言うと“必ずそうなる”みたいなニュアンスがありますが、
必ずしも起こるということではなく、私の経験では
4人に1人くらいでしょうか?(正確に統計を取ってないので断言出来ませんが)

あくまで程度問題であり、わずかに下がったくらいなら
この現象が見られても全員に手術を追加で行っている分けではありません。

さてそうこうしているうちに、
2日前に患者様がご様子見せの再診に訪れたところ。。。



右目に対して、左目の開きがが術前より弱くなっているように見えます。
(左のヘリの位置が術前より下がって、術前より黒目の見えている面積が減少)

眉毛の位置は左右ほぼ対称ですが、
ヘリング現象(Hering’s law)が起きていると考えられます。

左目も右目にそろえて修正手術可能ですと提案しましたが、
「右目の開きがよくなっただけでとりあえず満足です」との回答だったので、
しばらくはこのまま様子を見ようかと思います。

なお腱膜短縮手術は、一定レベル以上の技量の
形成外科医・美容外科医なら誰でも出来る手術なのですが、
中には腱膜短縮法をやったことがないか、出来ないドクターも存在し、
単に余った皮膚の切除や二重形成手術を「眼瞼下垂手術です」と称して
行っているクリニックが実は世の中には多いという裏事情があります。

最悪なのは、ドクター自身が挙筋腱膜短縮法だと思ってやっている手術が
実は全く腱膜短縮になっていないというケースです。

若い頃、修業時代に結構な頻度で見たことがあります。

多いのは、腱膜ではなく腱膜前組織が縫い縮められているケースです。

その場合は、手術を受けてもヘリの位置が上に全く上がらず、
むしろ逆に目が術前より眠そうに見えるようになってしまいます。
医原性眼瞼下垂と言います。

患者さんにとってはドクターを見分ける術がないので
何とも悩ましい問題ですが、
何とか少しずつこの件は啓蒙に努めなくてはと感じている次第です。

※詳しい眼瞼下垂・眼瞼挙筋前転法(保険適用)はこちらです。

<本ブログの症例に関する情報>

治療名:眼瞼下垂治療(腱膜前転法/片目・保険治療) 費用:72,000円 (自己負担21,600円)
治療に伴う可能性のあるリスク・副作用:腫れ、内出血、皮膚の傷跡、ライン消失、左右差、後戻りなど
治療内容に関する問い合わせ先:お問い合わせフォームからどうぞ

監修者情報
美容外科・美容皮膚科 みずほクリニック院長

札幌医科大学・大学院卒業。米国フロリダ・モフィット国立癌センター勤務(ポストドクトラル・フェロー)後、札幌医科大学・形成外科 助教、北海道砂川市立病院・形成外科 医長、大塚美容形成外科入職(大塚院・金沢院・名古屋院など)を経て、2014年みずほクリニック開院。形成外科・美容形成外科での豊富なオペ実績とあわせ、レーザー治療や注入術へ対する独自理論を追求し、患者様の理想とする姿を目指し的確でスピーディな結果を出すことに意欲を注ぐ。
免許・資格:日本形成外科学会・認定専門医、日本美容外科学会・正会員、医学博士