

年齢とともに生じる顔のたるみを感じやすい部位は、上瞼、下瞼、頬の3部位が代表的です。
なかでも上瞼のたるみについては、見た目の問題だけではなく、瞼の開きづらさから、額の筋肉を使って瞼を持ち上げようと努力する結果、額のしわ、上瞼のくぼみ、頭痛、肩こり、首のこりなどの原因となることが知られています。
上瞼のたるみの原因
瞼を開く筋肉が弱かったり、筋肉と瞼を連結する腱膜が伸びていたりすることもありますが、最も多い原因として皮膚がゆるんで伸びて余ることで、上からかぶさって視野が狭くなったり物が見えづらくなったりすることが挙げられます。ここまで進行してなくとも、上瞼の皮膚がたるむことで二重幅が狭くなり、アイラインがしっかり引きづらくなったり、今まで上向きだった睫毛が皮膚に押される形で下向きになってしまうなど、見た目上のお悩みのご相談をうけることが外来では多々あります。
上瞼のトラブルを解決する治療法
上瞼のたるみ取り治療はメジャーな手段を挙げただけでも多岐にわたりますが、これらのうち短いダウンタイム、仕上がりの満足度、傷跡の目立たなさなど総合的に考えるなら、4番の「眉下切開法」のメリットが非常に多いこともあり、実際に瞼のたるみ取り治療の中でも人気が大変高く、当院に限らず日本の美容外科全体の中で現代の主流トレンドになりつつあります。
- 1.埋没法二重(切開なし)
- 上瞼の余った皮膚を二重ラインの中に深く折り込んでたるみを取る。
- 2.皮膚切除
- 瞼の余った皮膚を切除する。
(二重ラインの上で切除する方法と二重ラインの下で切除する方法があります) - 3.眼瞼下垂手術
- 開瞼力いわゆる「目ヂカラ」が年齢とともに減少した、あるいは生まれつき弱い方において目ヂカラを強化する手術。
- 4.眉下切開
- 眉下の皮膚を、眉の下縁もしくは眉の中を切って切除することで上瞼をリフトアップする。
- 5.眉上切開
- 眉毛の上の皮膚を眉の上縁に沿って皮膚を切除して眉の位置を引き上げることで上瞼をリフトアップする。
- 6.前額リフト
- 額の生え際もしくは前頭部の髪の毛の中を切開し、額の皮膚を骨から剥がして上に持ち上げて固定することで、額、眉毛、上瞼の3つを同時に上に引き上げるリフト術。
- 7.レーザーによる上瞼リフト
- 瞼の表面もしくは瞼の裏側(結膜側)から引き締め作用のあるフラクショナルレーザーを照射する。
「眉下切開」が上瞼のたるみ取り法として人気の理由
上瞼のたるみ取り治療のイメージ
眉下切開とよく比較される手術として、二重ラインの上の皮膚を切除する方法があります。こちらも昔からあるスタンダードなたるみ取り手術ですが、両者の違いについて説明します。
まず知っておくべき重要な前提として、一般に上瞼の皮膚は下にゆくほど(睫毛に近づくほど)厚さが薄くなり、上にゆくほど(眉毛に近づくほど)厚さが厚くなってゆきます。
ゆえに二重ラインの場所で皮膚を切除した場合、上から厚い皮膚が下方に下がって縫い合わされるため上瞼の特に外側(目尻側)に厚い肉が乗っかったような仕上がりとなり、目元のスッキリ感が損なわれることがあり得ます。皮膚が元から薄い方の場合、この方法でも全く問題はないのですが、もともと皮膚に厚みがある方にこの方法でたるみ取りを行うと、「涼しげでスッキリした目元」というイメージとはかけ離れた仕上がりとなることが往々にしてあります。
二重ラインの上の皮膚を切除して上瞼のたるみを取る手法
これに対して眉下切開は、上瞼の最も厚い皮膚(つまり眉毛に近い皮膚)を切除してなくしてしまうため、瞼に厚みが生じるということはあり得ません。逆に、瞼の皮膚が上方に引き上げられるため、瞼の薄い皮膚が引き延ばされて薄い部分の皮膚が瞼の構成面積のより大きな範囲を占めることになるため、「スッキリと涼しげな目元」になりつつ、視野が広がります。(目が開きやすくなります。)
さらに、①皮膚のかぶさりによって狭くなっていた二重ラインが広くなる ②睫毛の向きが下向きから上向きとなり睫毛の生え際が正面から見て見えやすくなるなどのメリットがあります。
眉下切開による上瞼のたるみ取り
眉下切開は皮膚を切って縫うだけの単純な手技なのですが(つまり手技的難易度はそれほど高いわけではない)、上記のような効果があるため患者様の満足度が高く、なぜ世の中でこれだけ流行しているかには確かな理由があるということです。
※なお、切らない二重埋没法による上瞼のたるみ取りにおいても、同様にまぶたの肉が乗っかったような厚みが生じることがあります。二重術そのものが皮膚を折って2枚に重ね合わせることで初めてラインを作ることが出来るという性質上やむを得ない現象なのですが、このような場合にも眉下切開を合わせて行うことで厚みを軽減させることが可能です。
より傷を目立たなくする毛包斜切開法
一般的な眉下切開では、切開ラインは眉の下縁に沿って縫合線が仕上がるようにデザインします。時間とともに傷跡はほとんど分からなくなり、個人差はありますが、おおよそ3~6ヶ月程度でほぼなくなります。(最長1年近くかかることも)そのためダウンタイムの期間中は、メイクで眉を描くなどして傷跡を隠しカモフラージュする必要があることがあります。そのため眉を描く習慣のない男性にはこの方法は合わないかもしれません。
このような眉下切開の欠点をカバーすべく考えられた方法があります。それが、「毛包斜切開法」と呼ばれるテクニックです。皮膚の切開ライン(縫合ライン)が、眉毛の中にくるように皮膚を切除する方法です。
皮膚を切除する際に、皮下組織を皮膚に付けずに極薄にスライスするように切除することで、毛根を床の部分に残します。横から見た切開の断面図が下図のごとく斜めに楔形の形状となっています。クリニックによって呼称が異なることもありますが、毛包を残すための斜め形の切開という意味で「毛包斜切開」の名前で呼ばれることが多い手技です。眉毛が皮膚と一緒に切除されるため、眉毛幅が2ヶ月間ほど元の幅の2/3ほどの細さになりますが、その後皮膚の下に残した毛根から眉毛が皮膚を貫いて生えてきて傷跡を覆い隠し目立たなくなります。
毛包斜切開の原理(切開の断面図)
これで、ほとんどの方が傷跡を気にしなくなりますが、眉毛の密度が薄いなどの理由で傷跡がどうしても気になるということでしたら、傷跡に毛の色に近い色素を入れてさらに目立たなくするアートメイクもありますのでご相談ください。
眉下切開のデメリット・副作用
眉下切開は、上瞼のたるみを解消しつつ、二重ライン上を切除する手法よりも、ダウンタイムが短い、厚みが生じないなどのメリットが多い手術手技ですが、唯一の欠点として二重ラインが浅くなるという点が挙げられます。
上瞼のたるみが眉下の皮膚切除により上方に持ち上がって皮膚の余りがなくなること自体は良いのですが、二重ラインというのはある程度皮膚の余剰があって初めて二つに折った時に深みのあるラインが形成されるため、逆に言えば皮膚の余りがないと折り込みに深さを与えることが出来ません。
そのため眉下切開の術後に、深みがありクッキリしていたラインがただの皺のように浅いラインになってしまうことが稀にですがあり得ます。このような場合の対策としては、1つには眉下の皮膚切除の幅をあまりにたくさん取り過ぎないことが当然挙げられます。それでも折り込みが浅くなってしまった時には、二重切開法もしくは二重埋没法によってラインを新たに作り直すことをお勧めします。
眉下切開手術でこのような不都合が生じる確率は非常に低いのですが、どのような治療手技にもメリットとデメリットがあることを十分知った上で、自分にあった治療法を選んで頂ければと思います。
眉下切開術がむいていない人
眉下切開は、眉毛と瞼の間の距離があまりに短い人にはお勧め出来ません。眉下の皮膚切除により、瞼と眉毛の距離がなおいっそう縮まるからです。逆に瞼と眉毛の距離が長く、若干間延びした感じの方にはバランスを整える意味でもこの手術を行うことにメリットがあると考えられます。
瞼にたるみがあると、額の筋肉(前頭筋)を使用して眉毛を上に常に持ち上げているケースが多いため、一般的には瞼のたるみにより眉毛の位置は、上へ上へと徐々に年齢とともに移動してゆく傾向がありますが、稀に額のたるみによって眉毛が下に落ちるいわゆる「眉毛下垂」の方もいます。このような場合は、眉下切開ではなく「眉上切開」つまり眉の上の皮膚切除により眉の位置を上方に移動させる「ブローリフト」手術の適応となります。(この他ブローリフトには、もちろん前額リフトもありますが、眉上切開よりは多少大がかりになる。)
また、白人種のような目元を目指すなら、一般に瞼と眉の間の距離が短いほうがそれらしく見えることが多いです。いわゆる「西洋化手術」の一つとも言えます。